ヤクスギランドでは、ベテランガイドさんに案内していただき、
これまで知らなかった事をたくさん学びました。
江戸時代、お米の代わりに屋久杉が年貢として納められ、
「平木」として利用できる多くの杉は伐採されたそうです。
原生林ではなかったんですね、全然。
使える木かどうか「試し切り」された跡も教えてもらいました。
千歳を越えてやっと一人前の「屋久杉」、それより若ければ数百歳でも「小杉」。
今あるのは、凸凹があって使いにくいので切られなかった巨大な「屋久杉」と、
伐採後に育った「小杉」ということですが、どちらも立派でした。
鹿にかじられても生き残る、倒れて苔に覆われても腐らない、逞しい屋久杉に敬意を抱きました。
「仏陀杉」は推定樹齢 1,800年〜2,000年?
コブだらけで利用できない木とされ、切られずに生き残ったのでしょう。
木漏れ日を浴びて神聖な姿でした。
コブは仏様の頭に見立てられています。
「両手をくんで座禅しているように見えるでしょう」
「あ、本当だ」と納得したのですが、
その解説は、ベテランガイドさんが、以前たまたまその場に居合わせた
バスガイドさんの案内を耳にして「パクった」のだそうです。
それでも一度そう見えてしまうと、座禅する杉の木に見えます。
独特な形のため○○杉と名前がつけられる有名な巨木がある一方、
まっすぐに堂々と立つ巨木も残っていました。
年貢の「平木」にできる上等な木なのに、伐採されなかったのはなぜでしょう?
ブラタモリ風の案内をして下さるガイドさんからの質問です。
屋久島ではお米があまりとれません。
お米の代わりに杉を年貢として納めれば島の人々は困窮せずにすむのですが
当時は、山の木を切ると神の祟りがあると畏れられていました。
皆が安心して伐採できるよう、泊如竹(とまりじょちく)という賢人が山にこもり、「神のお告げを聞いた」と伝えました。
「切りたい木の前に一晩斧を立てかけ、次の日斧がそのままだったら、その木には神様が住んでいないので切ってよい」と。
反対に、次の日に斧が倒れていたら切ってはいけないということです。
それで、立派な木も切られなかったのだろう、ということでした。
泊如竹は島の英雄、というか聖人です。
お名前を存じ上げず、失礼しました。
ヤクスギランドを出て向かったのは約3,000歳とされている「紀元杉」。
ヒノキやヤマグルマなど、十数種類の仲間が着生しています。
「木が森になるんですよ。トトロにそういうのがありましたよね」と聞き
木の実をまいたらぽこぽこぽこっと芽が出て、わぁ〜っと森になった、
そんなシーンを思い出しました。
慈悲深く神々しいこの「森」に、5月6月になればツツジやシャクナゲが咲くそうです。
巨木に灯るように開く紅い花々。
そんな季節に行くことができれば何時間でも見ていたい、写真を撮っていたいなぁ。
しかし、ここは標高1,230メートル。
道ばたに除雪車が固めた雪が残り、鼻をすする冬の寒さなのです。
この日、天気予報はちゃんとはずれてくれて、雨は少しも降りませんでしたが
レンタルショップで借りたレイン・ウエア上下のおかげで、どうにか風邪をひかずにすみました。
備え、大事です!
山も森も苔も木も大好きですが、島の道も歩きたい。
杉林から帰り、登山靴の重さで疲労困憊の夫は休息を。私ひとりで散歩に出かけました。
山より暖かい海辺の道には、椿もレンゲも咲いています。
地図を見ながら海まで行き、香港から来たという若い女性と話がはずみました。
すっかり良い気分になっていましたが、
「しまった!夕食に間に合わない!」と気がついて、慌てて帰り始めました。
しかし、もと来た道とは違う道を歩いています。お店も目印もありません。
あたりは薄暗くなってくるし、心細い。
仕方ない!思い切って民家のチャイムを鳴らし
「すみません。道に迷ったのですが…」と助けを求めました。
不審者と思われてもよい状況ですが、若いお母さんの声がして、
玄関には小学生ぐらいの男の子とお父さんが出てきてくれて
「この道を行って、右に上がって下さい」と親切に教えて下さいました。
図々しさが役に立ちます。迷子というより迷惑大人になりました。
最終日、13:10の船に乗るため、バスで10時前に安房港に着きました。
(到着は宮之浦港でしたから、初めての港です)
コインロッカーに荷物を預けて付近を歩きまわろうという計画でしたが
ターミナルは閉鎖中でした。
ガラスのドアに6:00〜7:00 12:00〜13:10に開くという貼り紙があり、無人。
ネット情報ではターミナルは6:00〜だったのです。
疑問に思い、安房の観光案内所に電話で尋ねると「人手不足」だそうで「なるほど!」
3時間ひまをつぶすために、近くのAコープのベンチに荷物を置いて
交代で歩くことにしました。
「こんなはずでは〜」は、さらに続きました。
お昼ぐらいは暖かい所で食べたいと、夫は近くの人気店を下見に行きました。
「場所がわかった」とベンチに戻って来たので、私も安心して安房川にかかる橋まで散歩しました。
再び大きな荷物を持って、その人気店に着くと「本日店休」の看板が。
「さっきはなかったのに…」と夫。
聞けば、急遽店休に決まったそうで、まさかの昼食難民です。
そこに、先ほど橋の上で挨拶をしてくれた男性が通りかかりました。
「この近くでお昼を食べられるお店はありますか」とお尋ねすると、
「Aコープのお弁当はけっこう美味しいですよ」と笑顔で教えて下さいました。
屋久島最後の食事は、寒いベンチでオムライスと鮭弁になりましたが、
お昼が食べられて良かったです。
懐かしい菊池に帰り、暖かさを求めて、うどんの「夕立」に入ると
遅い時間に、お疲れでしょうに、満面の笑みと明るい声で迎えて下さる店主さん達。
福の神に見えました。